クラウドファンディングに試作品を掲載する前に!

クラウドファンディングサービスや、生活者のアイデアから商品化を行うサービスが増えています。その流れをうけて、試作ネットにも以下のようなご相談が増えています。
●クラウドファンディングに掲載したいので試作品を作りたい。
●リターンとして100~300個程度の製品を作りたい。
●原理試作は作ったのですが、どうしたら製品になりますか。
そこで、試作と少量生産、量産について考えてみましょう。
クラウドファンディングで見かける失敗
- 試作品の設計を自分で行ったけど、中量産しようとしたら予想外にコストがかかり、調達額では全然足りなかった。
- 試作品はできたのに、中量時に設計変更が必要になり、かっこ良くなくなった。
- プロジェクトが成功し、量産しようと思ったら、「金型では実現できない形状だ」と言われた。
- 量産しようとしたら、使用を予定していた材料が手に入らなかった。
プロダクト系のクラウドファンディングで良くある試作品製作のニーズ

このような流れで考えられる方が多いのですが、いくつか注意点があります。
製造原価とロット数 ←→ 売値とターゲットは連動している
ものづくりでは製造ロット数に応じて1個あたり製造費用が異なり、数が多いほど費用は下がることが一般的です。少量生産と大量生産では、製造方法も異なるため、設計方法も異なる場合があります。何個つくるかによって製造方法や設計方法が異なると理解すると良いでしょう。
1個あたり製造費用が高くなると原価が高くなり、売値も高くするしかなくなります。売値はターゲット設定と直結しています。製造原価が高くなると単に売値を上げれば良いわけではなく、売値を上げるならばターゲットを変更し、マーケティングメッセージやデザインコンセプトも変更しないといけなくなります。
売値が高くなると、対象となる顧客数は減少し、よりこだわりを持った、「厳しい目を持つコンシューマー」が客層となってきますので、思いつきレベルの商品では売れなくなります。
商品開発というのは、本来はターゲット設定から始まるはずで、原価にあわせてターゲットが変更になるというのは本末転倒ですが、これらの要素を一度に検討しながら、落とし所を探すことが現実的です。

上の図は、試作段階では少量生産で「1個あたり原価」も高かった状態(左上)から、量産(右下)にいくにつれて「1個あたり原価」が低減するイメージです。
上の象限にいる限り原価高の状態で「特殊な商品を、一部のこだわった人に販売する」ことしか行いづらくなりますので、量産時には原価を低減したいと考えます。ここにいくつかの、思い違いがよく存在します。
ものづくりの「量産」の単位は「何千個」
プロジェクトのリターンとして製品を100~300個くらいを製造する場面で、「量産になるから原価が安くなるはずだ」と考えがちですが、ものづくりの「量産」というのは、形状にもよりますが、何千個以上を指します。数百個というのは量産とは呼びません。
最初から何千個も作るリスクを避けるためにクラウドファンディングを活用することが多いですから、プロジェクト側としては、100~300個程度から・・・と考えるのですが、この数量を製造したときの製造費用を予め見積もっておく必要があります。
製造ロットを増やすと原価が下がる理由は、金型を使用するなどして生産性を高めるからですが、100個という、金型を作るほどの数でない場合、「数による原価低減効果」が見込めないことになります。すると原価が下がらず、想定していた販売価格では「売るほど赤字」という状況がおこる可能性があります。

量産を意識したデザイン・設計になっていないと、量産時の初期コストが莫大に
数百個という中量の場合には「簡易金型」という選択もあります。「簡易金型」は「本型」ほど耐久性がないかわりに安価で、数百個程度の生産に適しています。しかし、安価と言っても50万円~程度がかかります。
金型は部品ひとつにつき、ひとつの金型が必要になりますので、この時点では、「量産を意識したデザイン・設計がされているか」で初期コストが大きく変わります。何も考えずに設計をしていると、量産時に莫大な初期コスト(金型代など)が必要となり、設計変更が必要になる場合もあります。
すでに資金調達してしまったあとに大きな形状変更があると、せっかく応援してくれた人をガッカリさせてしまうかもしれません。

デザイン形状を変更すると金型の数や生産工程が少なくなります。
製品の形状や素材について優先度を考え、「重要ではない形状」があるようでしたら、変更することで初期投資や原価が抑えられます。
例えば、機械加工(切削加工)で原価を抑えようと思ったら・・・
実際にどのようなことを考えて原価を低減するのでしょうか。
結局は「原価」を低減させるためには「設計」段階からの検討が必要です。
最近は、安価なCADソフトや工作機械がありますので「設計は自分で、作るところだけ町工場に」と考えてしまいがちですが、設計から見直さないと「製品1個あたりの原価」は抑えることができません。
- 素材として広く売られている形状から加工する設計を考えます。丸棒、角棒、パイプ、ブロック形状、Lアングル、Cチャンネル等々、これらを組み合わせて目的の形状になるように設計すると、量産でもプレスなどより安くなる場合もあります。
- 機械での段取りのしやすさによっても値段が全然変わってきます。フライス加工であれば、特別な治具なしでも1回で複数個加工できるような形状だと安くなります。
- 金属の場合、素材によって値段が全然違います。固い金属は工作機械の刃物の持ちが悪く、加工賃も高くなります。強度の問題を考えて適切な素材を選びます。


試作品開発から中量、量産までサポートいたします

TAMA試作ネットワークでは、試作品製作から、中量、量産までスムーズにいくようにご提案いたします。
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