クラウドファンディングの前に(2) 商品企画で揃ってはいけない3要素

さまざまなご相談をいただく中で、「こんな商品企画は要注意」をまとめます。


「クラウドファンディングで成功したら、作らないといけない」リスク

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日本で「クラウドファンディング」という言葉が浸透してきたのは、東日本大震災をきっかけとした2011年。4年経ち、「アイデアを具体化するために役立つツール」という認識は一般化してきたでしょうか。経済産業省が毎年発行している「中小企業白書2014」にも、新しい資金調達の方法としてクラウドファンディングが紹介されています。

しかし、クラウドファンディングは「とりあえずアイデアを掲載して、資金が集まったら商品つくればいいや」程度の軽いノリでは、やはり取り組めません。

前回の「試作と量産について」では、クラウドファンディングでリターンする「中量生産」が、原価高になり調達した資金内ではおさまらない可能性があることを書きました。

クラウドファンディングでは、プロジェクトが成功したら物を作らないといけません。
量産効果を出すために、リターンする数以上の製造をする場合、売らないといけません。
今回は、物を売るという観点から、こんな商品企画は要注意!を考えてみます。

★わかりやすく考えるため、私が考えた架空の商品アイデアを元に考えてみます。

例:玄関の扉を開けなくても捺印できるスタンプ台を考案した。(商品名:無人だポン!)

玄関の扉をあけなくても、インターフォンにあるボタンを押すと、玄関の外側にあるスタンプ台で捺印でき、荷物を受け取れるという商品を考えました。
子どもをおいて家を不在にすることが多いのですが、今は物騒なので、子どもには誰が来ても玄関を開けないように伝えています。結果として荷物が受け取れません。再配達は面倒だし・・・という家庭のために、扉を開けずに捺印できるシステムです。

商品企画


商品企画で揃ってはいけない3要素

(1)ターゲットユーザーが広く、マス向けの商品である

その商品を使う人が老若男女、多くの世代にわたって必要性がありそうなものを「マス商品」といいます。マス商品とは、ざっくり言うと量販店で見かけるものです。特にこだわった品揃えをしている専門店以外の、総合スーパー(GMS)で見かけるものを想像してもらうと良いでしょう。

●マス向けの商品は、なぜダメなのか?
マス向けの商品は、大量生産することで原価が安価になり、売値も安くできる量産品です。量を作るためには、量を売らないといけません。ですから全国チェーンの売り場におかれ、多くの人の目にとまり購入してもらう必要があります。

マス向け、多くの人にとって必要性がある商品とは、一般的には、「必要性の強さは少ない」のです。つまり、どうしても欲しい!!という気持ちはありません。「誰にとっても必要ですが、それほど強く欲しいは思わない」。ターゲットを広く取るということは、そういうことです。

マス商品

●マス向けの対極は、マニア向け
100円のボールペンはマス向け商品です。コンビニにも置いていますね。どうしてもそのボールペンが欲しいという強いこだわりがあって買う人は少ないものです。それに対し、10,000円のボールペンはマニア向けです。買う人が限られます。欲しい人にとっては「どうしても欲しい」商品となります。欲しい人にとっては強く欲しいけど、欲しくない人には全く必要性を感じないものがマニア向けです。

クラウドファンディングやネットショップでウケるのは、マニア向けです。
マス向けの商品は、わざわざそんなところで購入しなくても、量販店で購入できるからです。

●マス向けの商品かどうかのチェック
自分が作ろうと思っている商品が、マス向けの商品かどうかをチェックする方法は、「この商品は、誰が、どういうシーンで使うもの?」という問いかけをしてみます。
アレコレでてくるようだと対象者が広すぎます。対象者を絞り、その代わり、その絞った対象者に対して「欲しい」機能を付加するなど、検討してみましょう。

無人だポン!のターゲットユーザーを考えてみると、この商品は「親が不在で子どもが留守番をして荷物を受け取ることができない」場面で活躍します。ターゲットとしては、
●宅配時間の8時~21時ま、仕事などで両親が不在になる家
●留守の時、危険だから玄関を開けてはいけないと言われる中学生以下の子どもがいる
という条件を満たすファミリーが対象になります。共働きやシングルの家庭の数を調査したり、中でも21時まで仕事をするような職種の人を対象とすると、それほど大きな市場ではないと考えられます。こういう時は、調査データだけではなく、生活者としての普通の感覚も重要になります。「21時まで両親が家にいない家族」というのは多くはないですね。


(2)製造方法が簡単

製造方法が簡単な場合、仮に売れてきた時にすぐにキャッチアップされます。
商品を作ったあと、販売の活動を行いますが、作る以上に不確実な取組みになります。「物を作る」や「費用を下げる」ことは確実にできることですが、「販売する」「売上をあげる」ことは不確実な世界です。そこに頑張って取り組み、売上があがってくると、旨味のある市場だとバレてしまえば、No.1企業が類似品を出して市場を奪っていきます。

●No.1企業の戦略~同質化戦略~
これから物を作ってメーカーになろうというスモール企業は、大企業の戦い方を知っておく必要があります。
市場に商品を投入する場合、後発企業は「差別化」された商品を考えて投入します。差別化というのは、既存の商品よりも異なった魅力がある、そしてその異なった魅力を欲しているお客さんがいるということです。

このような商品に対し、No.1企業は「同質化戦略」を仕掛けてきます。差別化を感じさせないように類似品を発売してきます。マス向けではなく、あまりにマニアックな商品である場合、同質化戦略で獲得するほどの市場でないと判断されれば放っておいてもらえます。
経営資源が乏しいうちは、ニッチな市場でNo.1を獲得することが重要です。

無人だポン!の構造は簡単です。インターフォンに取り付けるスイッチと、それに連動して印鑑が上下して捺印ができるという簡単なシステムです。爆発的に売れたら真似されます。真似されたときに起きうるリスクとしては、
・大手が量産したらもっと安く販売される
・セキュリティが強固になったり、差別化された後発商品が出まくる
・インターフォンのように標準装備になれば売れなくなる
そのようなことを予測して、販売計画を検討します。


(3)代替製品が存在する

いったいその商品は、何を目的としているものなのか?商品というのは、モノという形があるため、惑わされやすい。しかし、見た目に惑わされずに目的をブレイクダウンし、真の目的(商品の存在意義)を達成するためには他の方法ではダメなのか? と市場を見渡してみる必要があります。 もし代替製品が存在すれば、購入への意欲は低いでしょう。

●商品の2つの価値の方向性
商品は、何かの痛みを解消するために存在するか、今あるものをさらにもっと良くするために存在しています。
痛みを解消する方が緊急性がありあすので、購入のモチベーションは高くなります。

●代替製品が存在するかのチェック
その商品の代替製品を探すためには、次の質問をしてみると良いでしょう。
「この商品は、そもそも、何を解決するためのものだっけ?」
商品が存在する理由を明らかにすれば、それを解決する他の方法を発見できます。
ここで、モノという形に囚われてしまうと代替品は見つけることができません。

無人だポン!の真の目的は何なのでしょうか。扉を開けずに宅配便に捺印できるというのは機能です。
「子どもを安全に守りたい」であれば、扉を開けず荷物を受け取らなければ良いのです。無人だポン!の存在意義は「忙しい親でも確実に荷物を受け取れる利便性」です。
代替製品・サービスとしては、「コンビニ受取」や「宅配ボックス」がありますね。
近くのコンビニで荷物を受け取るようなサービスや、自宅に宅配ボックスを設置し、荷物をその中に入れてもらえば目的は達成されます。
生活者は「無人で印鑑を押す」という製品を比較するわけではありません。自分の目的を多様な方法で検討します。それが代替製品の存在です。



では、どうしたらいいのか?

自分が一番の顧客となる商品企画

こんな難しいことを考えながら商品企画なんてできない。そんな時は、自分が一番の顧客となる商品企画を考えるのが良いことがあります。実際に、自分がお金を払って買うものです。まずそのような商品を作って、自分で使ってみましょう。

必死にがんばる

この3つのポイントを理解しながらも、それでも作りたい。
そう思うときの最終手段は「必死にがんばる」です。
大変な道のりだと分かっていて取り組むわけですから、必死にがんばるしかありません。

ですから、最後は、「寝食を忘れて頑張れるプランなのか」ということになります。
そんなに大変だったらやーめよ、となるようなアイデアでは、やめておいた方が得策です。
夢中になれる商品企画を、期待しています!



試作品開発から中量、量産までサポートいたします

TAMA試作ネットワーク

TAMA試作ネットワークでは、試作品製作から、中量、量産までスムーズにいくようにご提案いたします。
プロダクトデザイン、回路設計、基板設計、金属加工、樹脂加工、塗装、解析など様々な角度からご提案いたします。お気軽にご相談ください。



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