クラウドファンディングの前に(3)商品開発の資金シミュレーション
TAMA試作ネットワーク、コンシェルジュの小野です。
最近まで苦しんでいた商品開発(数の多い樹脂製品の場合)の「投資計画」についての考えが、
やっと少しまとまりましたので、ご提供します。
投資計画というのは、
「いくらかけて、何個作って、いくらで売って、いくら儲かるのか?」
ということを考えるということです。
まずは、モックアップを作りましょう

最初の一歩は、モックアップを何らかの方法で作ることです。これから先、概算の見積もりを取ろうと思っても、何も判断するものがなければ、概算といっても、出てきません。また、モックもなければ、相手は「実現性」に疑問を持ち、相手にしてもらえない可能性もあります。
3Dプリンターとか、材料をカットして接着するとか、市販品を組み合わせるなどで、他人にみてもらうものを作ります。
この段階は、自分で行うことが望ましいです。
ここから依頼をしていると、資金的にキリがありませんし、素材や構造に対する知識も持てません。
Fablab(ファブラボ)やDMM.make AKIBAなど、自分で機械をいじることのできる場所は、たくさんあります。
イニシャルコストの計算
初期投資となる「イニシャルコスト」の見積もりを取ります。
イニシャルコストに含まれるのは、デザイン、設計、試作、金型製作、初回ロットの製造費です。ここまでは、物が売れても売れなくてもかかる費用であり、「初期投資」となります。

- 設計、試作の見積もりをとります。
- 金型については、設計しないと見積もりがでないことが多いため、部品点数と大きさから概算を出します。(部品点数そのものも、設計しないと出ないわけですが、ここでは構想レベルで行います)
- 初回ロットを何個作るか考え、成形費を見積もります。ここも、設計しないと難しいので、「モックアップをそのまま作るとしたら?」と質問して見積もりを教えてくれる成形屋さんを探します。
- 開発費の合計と、初回ロットの成形費の合計を、イニシャルコストと捉えます。
初回ロットは、なぜ「イニシャルコスト」なのか?
初回ロットの段階で利益を出すことは難しいからです。開発費の全てを、初回ロットから回収しようと思うと、相当な数を作らないといけなくなります。初回ロットは「イニシャルコスト」扱いにしておく方が、「少ない数を製造し、まず販売してみる」という考えが採用しやすと思います。
ランニングコストの計算
初回ロットを販売したら、量産に入っていきます。そのための、ランニングコストの見積もりを取ります。

- 5,000個とか10,000個などで見積もりをとります。ここでも設計がないと難しいため、モックアップと同じものを作るとしたら?という質問で、見積もりを教えていただきます。かなり幅のある数字であると認識していれば、問題ありません。プロジェクトを進めていく中で、数字が見えてきたら書き換え、計画を調整して運用していきます。
何個くらいつくれば採算に乗りそうか?の計算
製造数と、そのときの「1個あたり原価」を計算します。

- 適当な見積もりを確定させるためには、「設計」「デザイン」は必要なことです。その試作費がどの程度になるのか、合計します。
- ここでは初回ロットで100個作る予定です。その時の1個あたり原価は45,200円です。これは、開発費を100個で割り算して、1個あたり成形費に乗せるため、高くなります。でも実際は売値は3,000円程度を予定しているため、「100個しか売れなかったら完全にマイナス」ということが見えてきます。
- 初回ロット以降の、量産個数でも計算します。樹脂製品というと、「たくさん作った方が安い」というイメージが強いものですが、実際のところ、1個あたり製造原価に占めるのは、ある程度の数までは「開発費の配賦」の方が大きくなります。開発費というのは、「何を作るか」で決まり、「何個つくるか」はあまり影響しない費用だという理解が必要です。
- 1個あたり製造原価が、予定している売値に対して、許容できそうな個数を見つけます。今回は、3,000円程度で売りたいため、原価が1,300円代になる5,000個が最低ロットだと分かります。
全体像のシミュレーション
上記で、最低5,000個くらいは作って売らないといけないことが分かりましたので、
5,000個の場合でシミュレーションを行います。

2つの売上方程式があります。それをつなげることで、全体のバランスをシミュレーションします。
売上=(開発費+製造原価)×値入率
売上=客数×客単価×販売年数
主に検討するのは、下記の項目についてです。
これらは単一の概念で存在するのではなく、どこかを変えるとどこかが変わります。販売戦略も踏まえて、どのポジションで商品開発を行っていくのか、考えることに役立ちます。
売値(客単価) | 売値は、一番重要な要素です。対象者を絞り、より特定の人にとって価値あるものを作ると、売値をあげることができます。売値をあげると、販売個数(製造個数)は減少することが許されるようになります。 |
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販売年数 | 商品には、必ず寿命があります。プロダクトライフサイクルといいます。この商品を、何年程度で売らないといけないのかを考えます。スピードの速い業界ですと、1年も経つと全く状況が変わったりします。 |
値入率 | 製造原価と売値が決まれば、値入率が決まります。値入率は商品によっても異なります。値入によってできたマージンの中から、営業経費が捻出されます。ここが少ないと、営業力に欠けることにもつながります。 |
客数 | 製造個数と販売年数がイメージできると、客数目標が出てきます。実際の自社の営業体制を考えて、それだけの客数を獲得することはできるのか?という風に考えます。具体的に販売先候補をリストアップして、販売先ごとに販売個数を積み上げてみることも大切です。 |
スモールスタートアップの場合、「開発費をいかに速く回収するか」がとても大事だということです。
そうしないと、いつまで経っても利益がでません。
開発費を速く回収するためには、
1.開発費を減らす(自分でできることを増やす)
2.金型を使わないものから取り組む
3.特定の顧客に対して、より大きな価値を提供し、単価をあげられる商品をつくる
4.スピード感のある細かいフェーズ分けを行い、販売して現金を得られるようなステップを考える
などがあります。
量産、汎用的というジャンルは、最も難しいところです。
しかし、「それでもやりたい」という方は、想いと情熱があれば、ご相談ください。
コンシェルジュにお問い合わせいただければ、一緒にシミュレーションします。
試作品開発から中量、量産までサポートいたします

TAMA試作ネットワークでは、試作品製作から、中量、量産までスムーズにいくようにご提案いたします。
プロダクトデザイン、回路設計、基板設計、金属加工、樹脂加工、塗装、解析など様々な角度からご提案いたします。お気軽にご相談ください。
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